研究概要 |
1.ゴ-ルデンハムスタ-膵より分離したラ島の,比較的急速な冷却速度(25℃/min)での凍結保存を試みた.その結果,(1)解凍後のラ島の組織像は,一部凍結,解凍操作によって被ったと思われる損傷がみられたが,免疫組織学的検索も含め,ほとんどは培養のみのラ島と相違はなかった.(2)生物学的機能も,インスリン分泌能は非凍結培養ラ島と同程度にグルコ-ス刺激に反応したが,インスリンやDNAの含有量は,対照群に比し約20%の減少をみた.しかし,細胞1当りのインスリン含有量を表すインスリン/DNA比は,ほぼ同じ値を示した. ^3Hーチミジンの取り込みから算出したlabelling indexは,対照群とほぼ同様であり,DNA複製能も急速凍結によって失われることはなかった.(3)またこれら1,000個の腎被膜下への同種同系移植実験では,移植後正常値を維持し,腎摘出にて再び高血糖となり,その移植効果が窺えた.recipientをFisher系STZ糖尿ラットとした異種移植実験では,対照の非凍結ラ島と比べ,期待された免疫原性の低下は認められなかった. 2.ラ島を酵素処理し得られたラ島細胞を凍結保存,解凍後培養を付加することで得られたラ島様組織(frozen and cultured islet cell cluster,以下FCIC)の組織学的及び生物学的機能の検索を,培養のみにより形成したラ島様組織(islet cell cluster,以下ICC)と比較した.その結果,(1)FCICの組織像は,H.E.染色像でやや小さいながらも,培養ラ島とほぼ同様の形態を示し,インスリンやグルカゴンの局在も,培養ラ島と同様であった.(2)FCICのグルコ-ス刺激によるインスリン分泌では,基礎分泌量に比し,対照と同様に,有意に高いインスリン分泌がえられた.FCIC群のインスリン含有量は,対照群に比し約7%の減少をみたが,有意差はなかった.DNA含有量でも同様の傾向で,FCIC群では対照群に比し約12%の減少を認めたが,インスリン含有量/DNA含有量比は,FCIC群とCI群はほぼ同じ値であった.今後,FCICの移植効果と免疫学的修飾の有無についても検討を加える予定である.
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