術後多臓器不全、特に肝不全の解析に基づく肝臓死の提唱

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570751
• 研究機関: 山梨医科大学
• 研究代表者: 山本 正之 山梨医科大学, 医学部, 講師 (30158307)
• 研究分担者: 飯塚 秀彦 山梨医科大学, 医学部, 助手 (60184347) ; 青山 英久 山梨医科大学, 医学部, 助手 (60159308)
• キーワード: 術後肝不全 / 肝臓死 / 動脈血ケトン体比 / 重症感染 / エネルギ-チャ-ジ / TNF / クッパ-細胞 / 肺血管内皮細胞

研究概要

MOF発生症例は動脈血ケトン体比測定による術後管理能力の向上により、肝切除症例では発生しなかった。しかし、重症感染例の解析をとうして、肺合併症の出現時には動脈血ケトン体比の正常域からの急速低下が認められることを証明した。動物実験においては計染ラットを作成し、重症感染時の初発症状として発生する胸水貯留の発生と肝不全発生メカニズムの関連に焦点をしぼって研究を進めた。致死に至らない軽度の肝エネルギ-チャ-ジ、動脈血ケトン体比の低下例(肝エネルギ-チャ-ジ、動脈血ケトン体比がreversibleであるが、継続的に低下する)では肝臓のクッパ-細胞からのTNF産生量の亢進が血中TNFの上昇を促し、関連して上昇する血中cytokineの複合的関与により、肺内皮細胞が障害され、肺水腫が発生するものと推測した。また、このような状態においてはクッパ-細胞のス-パ-オキサイド産生能も低下しており、肺呼吸障害の重症化は、肝組織呼吸障害を招来とともに、さらなる肝エネルギ-チャ-ジ、動脈血ケトン体比の低下を促し、MOFの悪性サイクルの回転につながることを見いだした。

研究成果

• [文献書誌] 山本 正之: "救急処置ー肝外傷を中心にして 肝胆疾患(下)ー新しい診断・治療体系ー" 日本臨床. 46. 602-608 (1988)
• [文献書誌] 河野 哲夫: "外傷性中心性肝破裂の4例ー治療方針についての検討" 日本臨床外科医学会誌. 51. 1019-1025 (1990)
• [文献書誌] 山本 正之: "保存的治療の適応と限界.外科から肝細胞癌" 臨床外科. 45. 1467-1469 (1990)
• [文献書誌] 井上 慎吾: "大腸菌静注敗血症ラットモデルにおける肝.脾、肺胞マクロファ-ジ産生TNFから解析した肺水腫発生メカニズムの解明" 日本外科学会雑法. 92. (1991)
• [文献書誌] Iimuro Y.: "Lung water accumulation in rats after repeated challenges of sublethal dose of E.coli and its relation to the hepatic energy charge" Jpn.J.Surg.(1991)
• [文献書誌] 河野 哲夫: "肝切離端治ユ遷延に関連する因子の解析ー肝切除を入院期間に影響する因子の検討" 日本外科学会雑誌. 92. (1991)
• [文献書誌] 山本 正之: "肝癌 歴史的事項、科学、腫瘍の生物学 診断,新外科学体系26c" 中山書店, 38 (1990)
• [文献書誌] 山本 正之: "肝臓・胆道の外科 新外科学体系26C 機構及びー機能異常" 中山書店, 38 (1990)