研究課題/領域番号 |
01570752
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
青木 克憲 浜松医科大学, 医学部・第二外科, 講師 (20124927)
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研究分担者 |
西野 暢彦 浜松医科大学, 医学部・第二外科, 助手 (80228197)
中村 昌樹 浜松医科大学, 医学部・第二外科, 医員
今野 弘之 浜松医科大学, 医学部・第二外科, 助手 (00138033)
高田 明和 浜松医科大学, 医学部・第二生理学, 教授 (80092980)
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キーワード | 線溶活性因子 / ウロキナ-ゼ / tーPA / PAI / 癌の転移 / 癌の浸潤 |
研究概要 |
線溶活性因子・プラスミノ-ゲンアクチべ-タ-(plasminogen activator、以下PA)によるプラスミンあるいはcollageneseの活性化は、癌細胞の浸潤・転移などその進行に直接的な役割を果していることが想定される。本研究の最終目的は抗PA抗体による抗腫瘍効果の可能性を検討することにあり、第1年度の研究により、次のことが判明した。(1)PAにはウロキナ-ゼ(urokinase、以下uーPA)と血管内線溶活性因子(tissue plasminogen activator、以下tーPA)の2種類があるが、胃癌・大腸癌ではuーPAが優勢であり、明らかに癌組織中のuーPA値は健常粘膜に比し高値を示した。(2)胃癌組織について抗ヒトPAモノクロナ-ル抗体を用い免疫染色を行った結果、胃癌細胞の細胞質にびまん性に顆粒状の染色像を認め、とくにリンパ管浸潤部や固有筋層浸潤部において強い染色性を認めた。次に、第2年度の研究として、生体内におけるPA活性の調節物質であるplasminogen activatorinhibitor typelおよびtype2(以下PAIー1、PAIー2)の組織内定量を行い、癌の転移、浸潤に抑制的な作用を果たしている可能性について検討した。食道癌10例、胃癌45例、大腸癌33例の切除標本における組織中のuk、PAIー1、PAIー2を定量した結果、癌組織中ではいずれも健常粘膜に比し高値を示した。Uk値は、癌巣の深達度、リンパ節転移の程度との間に有意差を認めなかったが、PAIー1およびPAIー2値は、早期癌に比し進行癌において、またリンパ節非転移例に比し転移例が有意に高値を示した。これらの傾向は大腸癌においても認められた。モノクロナ-ル抗体による免疫組織染色では、uk、PAIー1、PAIー2ともに、癌細胞質に染色を認めた。以上より、PAIによるPAの生体内活性の抑制は癌細胞の転移・浸潤にも影響を与えると考えられる。従って、第3年度の研究は、当初の予定を変更し、PAIが進行癌で増加する機序の解明が中心課題になると思われる。従って、初年度に計画した抗ウロキナ-ゼ・モノクロナ-ル抗体・抗癌剤封入リポソ-ム結合体の作成によるタ-ゲッテティング療法の完成は困難な見通しである。
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