本研究は雑種成犬を用い、従来承認されてきた限界を超えて肝流入血行遮断に肝部下大静脈をも遮断して、肝のreperfusion injury の限界と血中prostanoid、endotoxinや脂質過酸化反応の推移、さらに虚血肝の潅流を行って肝障害の可逆性を明らかにするにことを目的としている。I群:60分間虚血群、II群:120分虚血群、III群:II群+4゚Cリンゲル液による肝潅流群の3群に分類し、肝動脈・門脈遮断及び肝上部・下部での下大静脈遮断中は力脈及び下大静脈血を送血ポンプにより頸静脈へバイパスした。潅流操作は肝側門脈本幹内に虚血肝フラッシュ用カテ-テルを挿入し、肝部下大静脈内には大腿静脈より排液用カテ-テルを挿入して行った。1.5日生存率:I群83%、II群14%、III群43%で死亡例はいずれも肝不全であった。2.一般肝機能:各群とも再潅流直後より異常を示し生存例は3日目で正常化したが、死亡例では増悪した。またII群の異常が最も強く、I群はIII群と同様の推移を示した。3.血中prostanoid:6ーKetoーProstaglandin・F_<1α>(6・KF)は再潅流直後より上昇し、II群で高値をとり、生存例では3時間後に漸減した。一方Thromboxane B_2(TxB_2)は生存例で高値を示したが、死亡例では再潅流後3時間で速やかに低値を示し、TxB_2/6ーKFでみると予後不良なII群は再潅流直後より著明な低値を示していた。4.血中endotoxin:再潅流後各群とも上昇し3時間でpeakを示しその後低下するが、II群の回復が有意に遷延した。5.過酸化脂質:血中では再潅流後高値を示し生存例では3日目で正常化し、肝組織中での濃度と相関した。6.その他:肝組織血流量は再潅流後2時間目で低下しその後生存例では回復したが、肝類洞では7日後でもKupffer細胞は肥大し、14日後に改善していた。 以上、虚血肝の限界や可逆性、予後判定など有益な成果が得られた。
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