研究概要 |
Vx2腫瘍移植家兎での高張塩処理血清の投与による抗腫瘍現象についてCancer Researchに投稿したが、英文の書直とコントロ-ル実験の追加を求められた。現在追加実験を略々終了した。プロテインAカラム(米国イムレ社製)を用いた臨床での治療実験の結果は日本癌治療学会雑誌に投稿し、これは採用された(J.Jpn.Soc.Cancer Ther.25(1):13-24)。しかし高張塩処理法での臨床での試みについての稿は採用を拒否された(日本癌治療学会雑誌)。この間、臨床治療実験並びにVx2腫瘍移植家兎を用いての研究は進行させた。臨床にては主として細胞性の変動の検討に主眼をおいた。家兎ではVx2腫瘍の疑似肝移転モデルを作成し、プロテインA潅流法と高張塩処理法による抗腫瘍現象の経時的な比較検討を電顕的に行った。プロテインA潅流では処理血清投与後1時間に腫瘍内血管の周囲に存在する腫瘍細胞においてミトコンドリアの膨化、細胞質内に空胞の出現などの変化を見た。核濃縮も1-2時間後に認められる。血管は変化を被っていないと考えられた。したがってプロテインA潅流による抗腫瘍現象は少なくとも(ブ菌物質などの漏出による)血管変化を介した腫瘍壊死ではないと結論する。高張塩処理法の電顕的検討はなお進行中であるがプロテインA処理での結果と極めて類似している。Cancer Researchに要求されたControl studyを実施中に正常血清を塩処理・投与しても抗腫瘍現象の観察されることが判明した。このことは極めて重要で、発現機序に大きな示唆を与える。ヒト血清では加塩処理によりC3a,C5aの増加、家兎血清では、C3の減少することが判った。プロテインA処理の場合の処理血漿の安定性などからも処理時点での補体の変性が処理の意味かも知れないと推測された。In vitroで吸収後に投与する実験では担癌血清に浮遊した腫瘍組織で吸収したときにIn vivoでの反応が阻止されるとの結果であるがなお検討中である。
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