研究概要 |
体外で処理された血清(血漿)による抗腫瘍現象について:1)プロテインAによる処理、高張塩(0.5MKClまたは1.5MNaCl)による処理のいずれによっても、担癌動物(V×2腫瘍移植家兎)の生存日数が有意に延長されることを確認した。A)抗腫瘍現象そのものの存在を、B)臨床での有用性の示唆を、より客観的に証するものとして重要である。2)非担癌(正常)血清を塩処理しても抗腫瘍反応の得られることが判明した。担癌家兎では担癌血清と非抗癌血清との間に、生存日数や組織学的検討において、差異を認めなかった。正常血漿による抗腫瘍反応は臨床治療実験(乳癌:FFP)にても確認した。このため体外処理過程では担癌生体に特異な物質を想定する必要が無くなった。イオン強度の蛋白結合への作用を考慮するとき、体外処理の意味として補体の活性化などが示唆される。3)抗腫瘍現象の発現様態について、電顕(TEM,SEM)による経時的観察(V×2家兎:プロテインA処理)を行った。細胞膜への障害が第一義であると考えられた。機序やより有効な応用方法(抗癌剤の併用など)に示唆を与えるものと考える。上記3点は第15回国際癌学会議(Hamburg,1990)にて発表した(2題)。4)ヒト腫瘍細胞ー自己血清の実験系(Cr遊離試験:プロテインA処理)において、A)体外処理された血清そのものは細胞障害性を持たない。B)自己の血清(担癌)に浮遊した腫瘍細胞に対しては細胞障害性が観察される一方、C)非担癌血清に浮遊した場合には認められない。これらの知見は、A)漏出ブ菌物質や体外処理過程で生成される物質の直接的な細胞障害性を否定する。B)処理血清を投与された生体内での反応に担癌血漿中の物質が要求されることを示唆する。生体での障害作用が腫瘍細胞に対して極めて高い選択性を有することについての解明の糸口を与えるものと期待する。これらについては、1991AACR(Houston)にて報告の予定である。
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