本年度における実験計画では、妊娠120日前後の母羊に吸入麻酔下に子宮切開を施行して胎仔を部分的に取り出し左開胸下に左肺静脈を結紮し、再度母体に戻し、妊娠を継続させる予定であった。妊娠母羊は、11頭入手したが、業者が高配日を正確に確認できないままに納入したため、正確な妊娠日数が確認できないうちに2頭が生まれてしまった。6頭に関しては、胎仔手術を行ったが、1頭は、麻酔器にエ-テルが混入した事が原因と思われるが麻酔からの覚醒が悪く、手術翌日に母羊が死亡した。1頭は、予定通りの手術が、行われたが、分娩直後に死亡した。剖検では、手術創は完全に治癒しており、肺静脈を結紮した肺は、空気が肺胞に入っておらず、結紮しなかった肺は十分に空気が肺胞に入り膨らんでいた。このことより仔羊は、分娩後に第一呼吸をしてから死亡したとこが解り、一側肺のみでは出生直後は、換気が不十分で生存するのが困難なことが推測された。これ以降の手術は、左上肺静脈の一本のみの結紮を行うことに計画を変更した。その後の手術は、術後子宮内感染で1頭を失い、1頭は分娩中に産道に前足が引っかかり、出生前に死亡した。2頭は、手術時既に満期に近い状態で手術がなされ、手術は予定どうり行われたが、出生直後に死亡した。この仔羊も剖検では、結紮した左上葉は全く含気がなく左下葉及び右肺は十分含期があり分娩後に死亡したことが示唆された。死亡原因は、はっきたしないが手術が満期に近くに行われたため、手術侵襲によるストレスから十分に回復する前に、分娩のストレスが加わり、出生後第一呼吸は確実行えてはいるが、生存することができなかったのではないかと推測している。残り3頭は、報告書を書いている時点で、まだ手術予定になっている。以上平成元年度の予定は大幅に変更を余儀なくされたが、平成2年度には得られた肺の組織学的検討を行う予定である。
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