合計9頭の羊に手術を施行した。実験早期において、術前の絶飲食の指示が不徹底であったために気管内挿管時に、大量の嘔吐をきたし術後早期に感染症で母羊を喪った。また胎仔の子宮内感染症のため胎仔死亡した。 手術後、出産まで至ったのは、6頭であった。全例自然分娩であったが、2頭の胎仔が産道に引っかかり分娩の介助を要し、分娩直後は自発呼吸が認められたが、まもなく死亡した。他の4例は、分娩後発見されたときは、既に死亡していた。剖検では、肺は十分な含気があり、分娩後自発呼吸はあったことが証明された。双胎は、3対で手術は一方のみに施行し他方はコントロ-ルとした。コントロ-ルとした仔羊も分娩後数時間内に死亡した。 剖検肺の組織が計測では、各葉間で肺静脈及び肺小静脈とも有意差がなかった。コントロ-ルとの比較において肺静脈では手術例において中膜がp〈0.005と有意に厚かった。肺小動脈でも、手術例においてコントロ-ルに比して中膜の肥厚が認められた。羊の胎仔の肺血流量は、左右両心室の心拍出の7%とわずかではあるが、我々の今回の羊の胎仔を用いた実験では、胎仔期に肺静脈閉塞性病変が出来ると出生前に肺静脈中膜の肥厚が始まり、一部肺小動脈にも影響を及ぼし始めることが示唆された。さらにこれらの病変が、葉間が有意な差が無かったことは、これらの病変が、単に血流及び圧の変化によるものではなく液性因子が関与している可能性が示唆された。この研究の目的の一つである出生後の肺血管病変の経時的変化は、出生直後に全例死亡したため、検討できなかった。
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