目的:線維芽細胞の肺癌細胞に対する影響をin vitro抗癌剤感受性試験法を用いて解明し、in vivoではヌ-ドマウス移植腫瘍の発育及び臨床病態への影響並びに臨床応用を検討した。材料及び方法:肺癌継代細胞14種と2ケ月以上培養した線維芽細胞13種を用いた。In vitroでは肺癌継代細胞に同数の線維芽細胞あるいはその培養上清を混合し、抗癌剤感受性試験法(MTT colorimetric assay 法)にてSD活性を測定した。In vivoではヌ-ドマウスに肺癌細胞と線維芽細胞を移植してその影響を観察した。更にin vitroの線維芽細胞と臨床経過とを比較した。成績:肺癌細胞あるいは線維芽細胞の抗癌剤に対する感受性にはheterogeneityが認められた。肺癌細胞と線維芽細胞(1:1)の3日間混合培養後、CDDPに対する感受性をみると、18組中11組に相互影響が認められたが、混合と同時にCDDPを加えると、18組全てにこの影響はみられなかった。線維芽細胞3日間培養後の培養上清でも肺癌細胞のCDDPに対する感受性に同じような影響がみられ、この活性は熱処理で失活し、放射線照射で影響されなかった。In vivoでは肺癌細胞のヌ-ドマウス移植時に線維芽細胞を同時に混ぜると生着率は向上し、増殖速度も亢進した。肺癌の増殖を促進した線維芽細胞を有する5症例では臨床的に比較的早期より広範なリンパ節転移が認められた。結論:ある種の線維芽細胞は肺癌細胞に対する増殖因子や抗癌剤(特にCDDP)感受性影響因子を有することが示唆された。特に線維芽細胞の抗癌剤感受性影響因子は肺癌細胞と線維芽細胞の混合と同時に薬剤を加えることにより無視できた。また、線維芽細胞の肺癌細胞に対する増殖促進効果とリンパ節転移との間になんらかの関与があり、肺癌患者の線維芽細胞を培養し、その培養上清液のin vitroにおける肺癌細胞(Luci10)への反応は個々の患者の予後予知に臨床応用できるものと考えられた。
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