研究概要 |
1.イヌ左肺をEuroーCollins液(EC液)、および抗酸化剤(Alloprinol、Glutathione)を含むUW液でflushingし、24時間4℃単純浸漬冷却保存したのち、全血もしくは白血球除去血で2時間潅流し、肺血管抵抗、気道内圧、静肺コンプライアンス、肺血管外水分量(湿乾燥重量比)、潅流血および肺組織の過酸化脂質を測定した。UW液で保存し白血球除去血で潅流した場合が最も良好な値を示し(各々150.1±33.6mmHg/L/min、16±1cmH20,15±0.8ml/cmH20,6.7±0.6,2.6±0.6nmol/ml,75+20nmol/g protein)、EC液保存ー全血潅流の場合が最も不良(各々270.8±111.3,29±4,10±4,9.7±0.7,3.7±0.5,83±7)であった。従ってin vitroにおける潅流モデルでは、白血球除去血による潅流が24時間保存肺の再潅流障害の軽減に有効であることが判った。 2.イヌ左肺をUW液でflushingして摘出し、4℃24時間単純浸漬冷却保存後同種移植した。血流再開前に白血球除去血350cc、25cmH20圧で30分間潅流し(n=6)、血流再開後60分、および8〜21日目に対側肺動脈閉塞試験を行い、さらに好中球活性酸素産生能(移植前値との比)、肺組織過酸化脂質、肺湿乾燥重量比を測定し、対照群(非潅流n=5)と比較した。対照群5頭中3頭がgraft failureを来し1頭が術後1日目に死亡し、白血球除去血潅流群では6頭中3頭にgraft failureをみ、うち1頭が術後1日目に死亡した。血流再開後60分のPa02、肺動脈圧、好中球活性酸素産生能、肺組織過酸化脂質、肺湿乾燥重量比は各々291±155Torr,30±5mmHg,1.00±0.31,49.6±15.6nmol/wet g,16.0±5.6で対照群と有意の差はみられなかった。また屠殺時(12〜21日目)の各測定値も対照群との間に差を認めなかった。従って、UW液による24時間単純浸漬冷却保存肺の同種移植は可能であるが、白血球除去血による血流再開前30分間の潅流は移植後の肺機能に著明な影響を及ぼさないことが判った。
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