研究概要 |
平成元年度の研究成果として、砂ネズミ前脳虚血モデルにおいて、インドメタシン(1,2,5,10mg/kg)が、海馬CA^1領域の遅発性神経細胞壊死を抑制することが明らかとなった。本年度は、インドメタシン以外のサイクロオキシゲナ-ゼ阻害剤やリポキシゲナ-ゼ阻害剤を用いて、遅発性神経細胞壊死に対する効果を検討することにより、この細胞壊死の進展にアラキドン酸カスケ-ドが関与するかどうかを明らかにしようとした。モデルは砂ネズミ前脳虚血モデルを用いた。両側総頚動脈を5分間クリップした後、再開通させ、1週間後潅流固定し、残存する神経細胞数をカウントした。サイクロオキシゲナ-ゼ阻害剤としては、ピロキシカム及びフルルビプロフェンを、またリポキシゲナ-ゼ阻害剤としてはAA861及びBW755Cを用いた。海馬CA_1単位mmあたりの神経細胞数は正常群で247±9であった。これに虚血を加えると残存細胞数は13〜14/mmにまで低下した。サイクロオキシゲナ-ゼ阻害剤であるピロキシカム(10mg/kg)、フルルビプロフェン(10mg/kg)、虚血30分前腔腹内投与後の残存神経細胞数は194±9、143±12であり、有意に神経細胞壊死を抑制した。一方、リポキシゲナ-ゼ阻害剤であるAA861(15,100mg/kg),BW755C(30mg/kg)いずれも抑制効果を有しなかった。以上の結果は、前脳虚血後におこる遅発性神経細胞壊死の進展にサイクロオキシゲナ-ゼ産物が重要な役割を演じている可能性を示唆する。 より脳虚血が高度な砂ネズミ両側総頚動脈10分閉塞モデルにおいて,インドメタシン(5mg/kg)は、遅発性細胞壊死に対する抑制効果を有しなかった。この結果は、高度な虚血に対しては、サイクロオキシゲナ-ゼ阻害剤の効果はないことをしめしている。
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