研究概要 |
運動機能回復に重要な部位を同定することを目的とし、初年度、ネコの延髄錐体路切断による運動麻痺モデルを作製し、行動観察とチトクロ-ムオキシダ-ゼ組織化学法(WongーRiley,1976年)による代謝活性を急性期4匹、慢性期2匹で観察した。次年度、急性期4匹に2ーDG法(Sokoloffら,1977年)で糖代謝率で検索した。最終年度、後根切断後に筋肉支配の末梢神経内にWGAーHRPを置いた急性期の2日後に2匹、一週後に5匹もちい、脊髄前根経由の筋肉関連部位を検索した。行動観察は1980年Gorskaの方法を改変した「エサ取り出し検査器」と自然行動を観察した。延髄錐体路切断一週後、対側前趾は屈曲優位伸展抑制となり、細かな運動の障害、歩行や体位にも影響が見られた。慢性期(7週)には筋ト-ヌスが弛緩性から緊張性となるも、これらの障害は持続した。後根切除一週以内は右前趾は自発的に殆ど動かさず、疼痛刺激にも反応せず、筋ト-ヌスも非常に低下し、深部腱反射は消失した。安静時患肢は不自然な屈曲位でも無無関心であった。しかし前庭脊髄反射は良く、急激な体位変化や歩行逃走時には良く動いていた。急性期慢性期を通じ「エサ取り出し検査器」は全く使用できかった。チトクロ-ムオキシダ-ゼ組織化学法で明らかな変化はなく、2ーDG法による糖代謝で障害同側の視床VPL核で低下が観察されたのみであった。WGAーHRP所見で左右両側の頸髄灰白質前角の大型細胞内/頸髄灰白質後角の小型細胞内/後索核/下オリ-ブ核/小脳核/前庭神経核/台形体/赤核/黒質/視床核/内包に結合が認められた。運動機能は著しく障害されてるのに左右/運動ー感覚の多重結合により統制されており、これらが機能回復に大きな役割を果たしていることが示唆された。
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