研究課題/領域番号 |
01570808
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉本 侃 大阪大学, 医学部, 教授 (10028342)
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研究分担者 |
鍬方 安行 大阪大学, 医学部, 医員
八幡 孝平 大阪大学, 医学部, 医員
木下 順弘 大阪大学, 医学部, 助手 (30195341)
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キーワード | 脳死 / 抗利尿ホルモン / インシュリン / 視床下部ホルモン / 脊髄反射 / 剖検 |
研究概要 |
我々は抗利尿ホルモン(ADH)とカテコラミンを併用することにより、脳死症例を循環が安定した状態で長期間維持することに成功し、脳死後の病態を詳細に検討することが可能になった。その結果、脳死判定基準を完全に満たしていたにもかかわらず、(1)脳死後数日以上経過しても視床下部ホルモンが高頻度に検出される、(2)疼痛刺激などに対する体動や異常な自発運動が起こる、と言う二つの重大な事実が認められた。これらの事実は脳死の定義をその字義通り「全脳の機能の不可逆的停止」とするならば、これに矛盾する可能性がある。本研究の目的は以上の二つの事実に対し、真相を明らかにすることである。 【結果(1)】内因性のADHは、脳死前には血清の浸透圧と相関し、正常に分泌されていたが、脳死直後から急激に減少し、血清の浸透圧が異常高値となっても上昇しなかった。このことは、脳死後は視床下部でのADHの生産が停止すること、更に、中枢からのADH分泌指令が無くなるため、下垂体後葉に残存するADHの分泌も無くなることによると考えられ、全脳死の概念とは矛盾しない。【結果(2)】脳死症例の頸部を強く前屈することにより、血圧の著明な上昇と頻脈という自律神経反射が起こることを、世界で初めて見いだした。この反射は、脳死症例12例中10例という高頻度で発生した。また、この反射は、脳死以外の症例では見られず、明らかに脊髄の壊死が上位胸髄に及んでいた症例にも見られ、交感神経遮断薬投与により完全に抑制されること等から、脳死に特有で、交感神経節より末梢での自律神経反射であると考えられた。更に、正中神経刺激による短潜時感覚誘発電位(SEP)では上位頚髄由来とされるN13頂点が脳死当日には明瞭に認められたが、経日的に減弱し、7ー10日後には消失した。従って、脊髄の壊死は上位頚髄では脳死後2ー3日の間に起こるが、それより下位では7ー10日後に起こってくると結論できた。
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