実験的研究においては髄液循環吸収障害モデル動物を作製し、脳室周囲白質と皮質灰白質の自由水分量を測定した。臨床的研究においては髄液循環吸収障害患者に磁気共鳴画像法を用いて、脳室周囲白質と皮質灰白質の自由水分量を測定し、その結果と実験的研究の結果との相関関係を検討した。実験的研究結果:脳室周囲白質と皮質灰白質の%全水分量はいずれの部位においても急性、亜急性、慢性期ともコントロ-ルに比し有意の変化は見られなかった。コントロ-ルおよび各時期の水頭症とも皮質灰白質の方が脳室周囲白質に比し%全水分量は高い値を示した。脳室周囲白質および皮質灰白質の%自由水量については脳室周囲白質の急性期と亜急性期は、コントロ-ルに比し、有意の上昇をしめした。また慢性期についても上昇の傾向がみられた。しかし急性期には最も高く、亜急性期から慢性期へと移行するにつれて、しだいに減少傾向を示した。しかし皮質灰白質については、各時期とも有意の変化はみられなかった。また急性、亜急性期には、正常コントロ-ルとは逆に%自由水量は脳室周囲白質の方が皮質灰白質よりも高値を示した。慢性期になると正常関係に戻る傾向がみられた。臨床的研究結果:コントロ-ルでは灰白質の方が白質よりT1、T2値とも有意の延長がみられたが、真性髄液性循環障害群では逆に白質の方が灰白質よりもT1、T2値共有意の延長が見られた。髄液性障害群は非髄液障害群ならびにコントロ-ルに比し、T1、T2値とも有意に延長を示した。しかし非髄液性障害群とコントロ-ル間には、白質のT1値は前者は後者に比し有意の延長をみたが、T2値は有意差をみとめなかった。皮質灰白質のT1、T2値は3群間に有意の差はなかった。真性髄液循環障害群ではシャント前の脳室周囲白質のT1、T2値ともシャント後には有意の短縮を認めたが、皮質灰白質のT1、T2値はシャント後も変化を認めなかった。
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