カオリン大槽内注入による実験的水頭症の脳室周囲髄液浮腫について研究を続けてきた。脳室周囲の白質内に自由水が移行し、自由水浮腫のために脳実質損傷をきたし結合水はかえって減少する。慢性期には経脳室壁性に白質内で自由水が吸収されるにつれて、組織再構成が行われ結合水が正常近く復元した。磁気共鳴画像法とスペクトロスコピ-の同時併用により水頭症の各時期と白質内髄液浮腫の程度と脳エネルギ-代謝障害の相関を検討した。エネルギ-代謝の指標としてフォスホクレアチン燐酸対無機燐の比(PCr/Pi)を生物エネルギ-係数として、脳エネルギ-代謝の指標とした。急性ー亜急性期で脳室周囲の自由水浮腫が高度の時期にはPCr/Piは低下を示し、脳エネルギ-代謝障害が強く示された。しかし自由水が吸収路の発達につれて吸収され、白質内自由水の減少をきたし、それにともなう組織修復によってもたらされた結合水の正常への回復とともにエネルギ-代謝障害も正常への復元を示した。以上のことから急性期ー亜急性期には自由水の脳室周囲白質浮腫が脳実質のミトコンドリアにおけるエネルギ-代謝障害を生ぜしめて水頭症症状発現に関与していることが解明された。そして自由水の特性である運動性と拡散性により吸収路の発達につれ、慢性期には自由水が吸収され浮腫の軽減により組織修復、再構成が行われ結合水の増加とともに脳エネルギ-代謝が回復してくることが示された。今回の研究により水頭症の脳エネルギ-代謝障害も脳室周囲の自由水浮腫が大きく関与していることが判明した。
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