研究概要 |
脳神経外科領域では、その術中に脳主幹動脈を一時的ないし永久的に遮断閉塞することがあり、その安全性の確保のために各種モニタ-が用いられている。我々は、内頚動脈閉塞症などの脳血管性病変に対する各種手術中に脳波モニタ-(通常脳波、Power Array法、2次元脳電図、各種誘発反応)を行ってきたが、その術中変化を捉えることは必ずしも容易でない。血流遮断中の変化より客観的にかつ簡便、確実に描出する連続脳波分析法をコンピュ-タ-システムを用いて開発した。まず10-20法にしたがって頭皮上に12ないし16個の電極を装着し、通常脳波を記録できるようにしておく。導出した脳波をsignal processorにinputし、高速フ-リエ変換して得られた各周波数帯域(δ,θ_1,θ_2,α_1,α_2)別のpower amplitudeを左右の半球別には算術平均した値を求め、麻酔安定時の血流遮断前値を各周波数帯域の基準値(100)として、その変化を経時的(20秒間隔)に各々その百分率を求める。これを縦軸を変化率(%)、横軸を時間にして折線グラフ状にブラウン管ないし記録紙に表示した(Hemispheric Power Amplitude-EEG,HPAーEEG)。この方法により周波数帯域別の変化がきわめて明瞭に示され、視覚的、客観的評価も容易に行い得た。脳血流の低下を示唆する異常脳波所見を(1)50%以上のαwave suppressionと(2)δ(orθ)waveの明かな出現ないし増加とした。本法により捉えられた脳波変化は、power amplitudeが遮断中も無変化であった型、遮断中に回復する型、遮断中低下が持続する型、遮断後も低下が持続する型に分類できた。我々の臨床例ではslow waveの出現ないし増加をみたものは36.4%あり、そのうち62.5%はαwaveの抑制であった。現在本法を更に発展させて、%表示を対数表示に変更し、変化率2次元脳電図を画面右側に、HPA-EEGを左側に表示させることにより、異常脳波の局在をも表示させる方法を開発中である。
|