研究概要 |
雑種成猫を用い、KAOLIN大槽内注入により水頭症モデルを作製、3〜4週目に脳室が拡大していることを確認したのち、脳室胸腔短絡術を施行し、さらに3〜4週を経過したところで側脳室周囲組織から試料を採取し、水分含有量測定と電顕による形態学的観察を行った。 正常群、水頭症群、短絡術施行群はそれぞれ6頭、6頭、5頭であり、その全てに水分含有量を行い、短絡術後の1頭を除く全ての動物に電顕による検索を行った。 短絡術により、拡大していた脳室は著明に縮少し、ほぼ正常の脳室の大きさに戻っている。 水分含有量の測定結果はW_1(脳室壁より1mm)、W_2(同2mm)、W_3(同3mm)の三つの異る部位で正常群では70.23,68.31,66.68%Waterであった。(標準偏差値は何れも省略) これに対し水頭症群ではそれぞれ72.86,66.19,65.59%Waterであり、短絡術施行群で70.42,67.51,67.38%Waterであった。 電顕による観察結果は水頭症群でW_1の細胞構築の破壊著明、細胞間隙の拡大著明、gliosisの発現は軽度及至中等度であったのに対し、W_2では上記変化は何れも軽度に留り、gliosisの発現はみられなかった。W_3ではほとんど変化を認めていない。 一方、短絡術施行群では、W_1で細胞構築の破壊軽度、細胞間隙の拡大は消失または軽度、gliosisは中等度及至高度にみられた。W_3ではほぼ正常脳に近い所見を呈した。 以上より短絡術により、水頭症にみられる細胞構築の破壊、細胞間隙の拡大は明らかに改善されるものの、gliosisが脳室壁直下(W_1)にみられることが判明した。
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