研究概要 |
われわれは前年に引き続き、大槽内Kaolin注入により作成した水頭症モデルを用い側脳室周囲組織における短絡術の影響について光学顕微鏡、電子顕微鏡を介して観察すると共に同部の水分含有量を測定した。結果は短絡術後、脳室縮少とともに有意に増加していた(w_1=75.1±0.7,w_2=72.3±0.5,w_3=69.1±0.5%)脳室周囲組織の水分量は減少し(w_170.8±1.8,w_2=67.5±0.6,w_3=67.4±0.9)、正常対象動物の水分量(w_1=70.2±0.5,w_2=68.3±0.8,w_3=66.7±0.9)と一致を認め,また組織病理変化においては、拡大していた細胞外腔の狭少化がみられた。 これら一連の脳室周囲組織の変化は互いに相関し、われわれが過去に報告した水頭症における脳室周囲の微小循環の改善に寄与し、従って短絡術後の臨床症状の改善にも関係があるものと考えられた。 しかし、これらの相関する一連の変化の中で,gliosisの発現に関しては、短絡術を施行した動物において進行性に、かつより深層部にまで及ぶことが観察されたのは注目すべきである。 さらにわれわれは、これらの観察結果に基づいて、水分含有量と組織変化の2つのパラメタ-を水頭症慢性期(短絡術後10週間の有効短絡期間を確保し、無効症例とtimeーma+chedモデルで観察)で観察し、短絡術無効群(短絡術にも拘らず脳室拡大に改善しないもの)と有効群を比較検討することを現在行っており、10週を経た慢性期水分含有量(w_1=72.10±1.30,w_2=69.77±2.13,w_3=65.83±1.02%)が正常対象群のそれとほゞ一致し、脳室の拡大も短絡術施行前の状態と大きな変化をみないとの結果をみている。病理学的検索は現在進行中である。
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