平成元年度は、当初使用予定のマウスモノクロ-ナル抗体HG4とHE2に代わってヒト型モノクロ-ナル抗体CLN-IgGを優先的に用い、交付申請書に示した研究実施計画とほぼ同様の実験を施行した。 動物モデルはヒト悪性グリオ-マ細胞U-87MGの皮下移植ヌ-ドマウスを用いた。まず^<125>IをラベルしたCLN-IgGの全身投与で、この抗体が移植腫瘍内に選択的に集まり、約1週間腫瘍内にとどまることが明らかとなった。さらに、RIをラベルしない形での腫瘍増殖抑制効果をみる実験を行ったが、これに関しては当初の実験計画をやや変更して、当大学に既存の動物用作磁気共鳴(MRI)装置を用いて経時的な腫瘍内組織変化を観察した。この結果、CLN-IgGの1mgを腫瘍発育早期より頻回に全身投与してやることにより、明らかな腫瘍増殖抑制効果が得られ、MRI上からは腫瘍の中心壊死が増強される可能性が示唆された。また、この抗体のもつ腫瘍増殖抑制効果のメカニズムの一端を解明するために、NK活性を同時に測定したが、モノクロ-ナル抗体非投与群に比して明らかなNK活性の増大が認められ、CLN-IgGの抗腫瘍活性にNK活性が強く関与していることが示された。今後はさらにin vivoにおけるADCC活性についても検索する予定である。マウスモノクロ-ナル抗体HG4をHE2についても当初の目的に沿って上記と同様の実験を開始しており、平成2年度はこれら抗体についてのさらなる抗腫瘍効果の解明がすすむ予定であり、動物モデルもより臨床状態に近い頭蓋内移植モデルで施行される予定である。
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