ラットの大槽内自家動脈血注入モデルを用い、血腫注入直後の脳表脳血流量(CBF)、および硬膜外圧(EDP)の変化を連続測定した。超急性期のCBF、およびEDPの変化は医科の3つの型に分類された。YTPE1(軽度SAH群):血腫注入直後EDPはほぼ瞬時に拡張期血圧以上に上昇し、それに対応してCBFが著明に低下する。その後、EDPは5分以内に回復し、CBFもovershootを示したのち元のレベル、もしくはやや低い値に戻るもの。TYPE2(中等度SAH群):血腫注入直後瞬時に上昇したEDPは5分以上持続する。その後、徐々に回復傾向を示し、CBFも同様に回復傾向を示すもの。TYPE 3(重度SAH群):血腫注入直後瞬時にEDPが上昇し、回復傾向を示すものの高値を持続する。これに反し、下降したCBFの回復がほとんどみられないもの。生食注入群ではTYPE1と同様の変化を示したが、元のレベルへの回復はより速やかであった。さらに、TYPE1およびTYPE2において、血腫注入60分後および120分後のCBFには有意な低下はみられなかった。この結果はmicrosphereを用いた実験で、SAH後30、60分でCBFが徐々に低下したとする従来の報告例とは異なる。TYPE3では、不整脈の出現や肺水腫の合併が高率にみられた。また、これら3群の分類は脳底槽の血腫の多少と相関を示す傾向にあった。人の遅発性脳血管攣縮の病態を研究する上では、このモデルにおける晩期脳循環動態の検討が必要である。また、大槽内1回血液注入モデルでは、72時間後の脳底動脈の電顕的観察でvasculopathyを示さなかったとする報告もあり、大槽内2回血液注入法を用いることにより、ラットにおいてもvasculopathyをきたすような晩期血管攣縮モデルの開発も今後検討していく予定である。
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