研究概要 |
本研究では、グリオ-マの生物学的特性を解析する基礎的研究の対象としてRosenthal fiber(RF)をとりあげた。RFはグリオ-マのなかでも分化度の高い星細胞腫に出現し変性構造物と考えられている。新生物に生じる変性過程と考えられるもの(RF)の本体を解析することを目的とした。手術摘出標本(小脳星細胞腫、視神経膠腫、背髄星細胞腫)による検討から、RFは星細胞腫細胞内の構造物で、エオジン好性、PTAH及び鉄ヘマトキシリン陽性、PAS陰性であった。免疫組織学的検討では、抗GFAP抗体によりRFが強陽性を示したがRF中心部は陰性であった。抗PHFモノクロ-ナル抗体(DF2:ユビキチンを認識する)と抗ユビキチンポリクロ-ナル抗体(Dr,Haasより供与)による染色では、いずれもRF辺縁部が陽性、中心部が陰性を示した。連続切片による観察では、HEでエオジン染色の薄いRF辺縁部が、GFAP、ユビキチンともに陽性所見を示した。RF形成過程におけるGFAPとユビキチンの関与が想定された。その頃、T.IwakiらがAlexander病脳に出現するRFを精製しRF本体の構成成分としてαβクラスタリンを同定した。市販のαクリスタリンをαA,αBに分離し、家兎に免疫して抗体作成を試みているが、末だαBクリスタリンに特異的な抗体が得られていない。αβクリスタリンのC末ペプチドを用いて特異的な抗体を得たとの報告があり、現在、鋭意抗体作成にとり組んでいる。グリア・グリオ-マ細胞においてクリスタリンが果たす役割を検討して行きたいと考えている。なお、上記神経膠腫標本の検討から、星細胞腫細胞内にgranular body(Gb)を認めた。GbはRFと同様星細胞腫細胞内に認められ変性構造物と考えられている。病理染色ではGbはPTAHで濃紺に染色され、Gb全体がGFAP陽性、ユビキチン陽性であった。また、小脳血管芽腫剖検例で、血管芽腫裏胞周囲のグリオ-ンスにRFを認め、RF辺縁部がGFAP、ユビキチンともに陽性所見を示した。
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