[目的]基底膜が末梢神経の再生に関与していることは周知の事実であるが、この中に含まれるtypeIV collagenをin vivoに応用した実験はこれまでにない。私達はtypeIV collagenに各種神経誘導因子を組み合わせ、末梢神経再生実験を行った。 [方法]生後10週のwister系のratの両側坐骨神経を10mm切除した後、硬膜外チュ-ブを用いて神経の両断端を架橋し、チュ-ブ内に約12mmのgapを作製した。これらのチュ-ブ内に何も注入しないものー(1)、typeIV collagenのみ注入したものー(2)、typeIV collagenにlamininを加え注入したものー(3)、typeIV collagenに2.5SーNGFを加え注入したものー(4)、typeIV collagenに7SーNGFを加え注入したものー(5)の各種モデルを作製し、5週および10週で屠殺し、神経の再生状態を肉眼的および組織学的に観察した。 [結果]5週では各モデルとも明らかな架橋形成は認められなかった。10週では、(1):再生組織を全く認めなかった。(2):4本中2本に連続性を認め、うち1本は比較的太い再生神経であった。(3)(4)(5):ほぼ全例に連続性を認めたが、特にlamininを加えたモデルでの再生状態が良好であった。組織学的には太い架橋形成のみられたモデルで有髄神経の再生状態が確認できたほか、神経再生時、周囲に肥満細胞(mast cell)が出現することが確認できた。 [まとめ]typeIV collagenはそれ自体に神経誘導能があるといわれているが、今回の実験結果からもその可能性が示唆された。typeIV collagen単独よりも各種神経誘導因子との組み合わせにより更に良好な神経の再生が確認できた。肥満細胞は末梢神経再生時出現することより、何らかの機能を果たしている可能性が示唆された。
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