金属製の型を製作し、シリコンラバ-およびポリウレタンを注入して重合、固化させることより人工関節包を製作した。幾何学的形状から離型時に破損することが多かったが、材質に応じて適当な離型剤を用いることにより、完全な製品を作れるようになった。 関節の屈曲、旋回運動を再現する人工関節包シミュレ-タ-を製作し、試料を取り付けて可動範囲と変形抵抗を調べた。可動域は屈曲で90°、旋回で40°におよび、市販の人工関節の可動域を上回っていることから、実用上十分であることが確認された。大変形時には人工関節包の表面にしわが現れ、同時に変形抵抗が低下する現象が見られることから、座屈モ-ドの変形が含まれることがわかった。また特に旋回運動において骨頭側の取付部の近くで応力が大きく、この部分を強化する必要があることがわかった。この強化形人工関節包の可動範囲も実用上十分であった。 ピンオンフラット形の摩擦試験器を用いてアルミナと超高密度ポリエチレンの組合せについて人工関節液の潤滑特性を調べ、牛の血清による結果と比較した。ヒアルロン酸の5%水溶液では摩擦係数と摩耗量が1/10程度に減少した。一方植物性の油脂を用いた場合にはさらに潤滑性能が向上した。特にひまし油では摩擦係数は1/50まで減少し、面圧3MPa、速度30mm/sの条件下において4週間の試験を行った結果、摩耗深さは1μm以下であり、正確な測定は不可能であった。このように人工関節液を用いると人工関節の耐摩耗性を大幅に向上させうることが示された。
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