研究概要 |
本年度は血管柄付移植骨の血流と骨動態の関係を明らかにする目的で以下の実験を行った。 【実験】体重2kgの幼若家兎用いて、血管柄付移植群は右第二中足骨近位2cmを周囲組織を含めて、伏在動静脈を血管柄として挙上した。大腿骨骨幹部に作成した骨欠損部に移植し、創外固定をおこなった。遊離植移群は骨膜下に周囲組織を除去した遊離の右第二中足骨を同様に移植した。移植後2週、4週、6週に各4羽ずつマイクロスフェア-法を用いて、骨血流量の測定を行った。X線撮影により移植骨の骨癒合と横径増大を調べた。 【結果】血管柄付移植群では術後2週で骨癒合は見られず、4週では4羽中2羽で近位骨接合部の骨癒合を認めた。6週では全例近位骨接合部が癒合し、遠位骨接合部も4羽中2羽で癒合していた。遊離移植群では6週の1羽にのみ遠位骨接合部に癒合を認めた。血管柄付移植群の移植骨血流量の経時的変化を移植床である大腿骨近位部の骨血流量との比でみると、移植後2週では1.15,4週では1.62。6週では2.42であった。遊離移植群の移植骨の骨血流比は移植後6週でも0.26に留まった。レ線上計測した移植骨の健側との横径比は、血管柄時移植群では2週で1.0倍,6週で1.4倍と増加した。遊離移植群では6週以内には横径の増大を認めなかった。 【考察】本年度の実験で、移植骨を血管柄付腓骨移植の臨床例に類似した力学的、生物学的環境下におくことによって、移植骨の横径増大現象の進行とともに、骨血流量の増加が移植6週後も継続することが明らかになった。同時に本モデルは、移植後早期の反応性骨膜性骨増殖や移植骨の力学的ストレスに応じた骨動態を示すことも骨多重ラベリング法で認められた。HE染色標本でも骨新生部での旺盛な血管増生を認め、今回の骨血流量測定により実証し得た血流量の増大が、旺盛な骨増殖に相応するものであることを示唆している。
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