研究概要 |
平成元年度に、変性腱板中にゼラチン分解酵素が存在し、それがセリン系酵素である好中球エラスタ-ゼと同定されたことを報告した。平成2年度には、剖検時に採取した(1)40才未満(2)40ー59才(3)60才以上の腱板のゼラチン分解酵素活性を測定し、酵素活性が非断裂例では、若年者より加齢的に増加し、40ー59才群で最も高く、高齢になるにしたがい低下することを報告した。 今回は、各年齢群を陥凹の有無・fibrilationの有無・断裂の有無などの肉眼所見を基に、(1)正常または軽度変性(2)中等度変性(3)高度変性と3区分し、それぞれについてゼラチン分解酵素活性を測定した。また、肉眼所見で分類した各々の組織像を検討した。(実験結果)年齢群に分けて検討すると、高度変性群で40歳未満の材料は得られなかったが、中等度および高度変性群では、酵素活性が40ー59歳で高く、40歳未満・60歳以上で低くなった。しかし、これに反し正常群では、加齢的に活性が高くなった。また、変性群で分けて検討すると、年齢に関わりなく中等度変性群に高い酵素活性が見られた。各々の腱板の肉眼所見と組織像を検討した結果は、変性が高度になるに従い腱線維のwavy patternが消失した。山中の分類での変性のgradeと肉眼による分類は、ほぼ相関していた。 本酵素活性が、組織学的に変性が生じる年齢でもあり、また肩関節周囲炎の好発年齢でもある40ー59歳群にピ-クをもつことは興味深い。また、変性が中等度進んだときに活性が高くなることより、変性の初期ー中等度に関与していると考えられる。今後さらに、変性に関与すると考えられる他の酵素(コラ-ゲナ-ゼ,プラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-)についても検討する予定である。
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