研究概要 |
イガイから抽出した接着性蛋白質ーpolyphenolic protein(以下pppと略す)ーおよびフェノ-ル派生体の組織保護作用を検討するために、以下の実験を行った。1).イガイ足部を採取し、各種protease inhibitorの存在下に中性塩緩衝液中で組織ホモジネ-トとした後、沈殿物を酢酸緩衛液中に溶解した。さらに可溶性分画をホウ酸緩衝液中で透析した後に濃縮し、HPLCを用いて最終的に精製した。また、フェノ-ル派生体として、αーmethyldopa、(+)catechin,hesperitin,rutin,tannic acid geranin を購入し、コントロ-ルとしてalbuminとfibronectinを用いた。2).精製したpppを酢酸溶液中に、また、各種フェノ-ル派生体およびコントロ-ル群をdimethyl sulfoxide溶液中に溶解し、異なった濃度において、brightーred染料が結合した牛皮不溶化コラ-ゲン(以下 Azocoll)を添加し反応を行った。反応溶液を常温で減圧乾燥した後、中性塩溶液中でprotease処理を行った。この結果、tannic acid,PPPおよび高濃度のgeraninでコンティングを行ったAzocollは、protease消化に対して強い抵抗性を示した。一方、その他の派生体で処理を行ったAzocollは、proteaseの添加により完全に消化された。3).tannic acid,geraninおよびPPPによりコ-ティングを行ったAzocollの表面構造を走査電子顕微鏡で観察したところ、無処理のAzocollと同様の縄状構造であったのに対して、後者は無構造な膜様組織に被われていた。4).PPP,tannic acidおよびgeraninでコ-ティングしたAzocollを家兎の膝関節腔内に挿入し、認められなカった。5).現在、家兎の膝関節内にPPP,tannic acidおよびgeraninでそれぞれコ-ティングを行った自家腱を用いて膝前十字靭帯を再建し、経時的に再建靭帯の形態学的検索および生化学的分析を行っている。
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