研究概要 |
慢性関節リウマチに対する根治的治療としての骨髄移植療法の可能性を検討するために、その誘発モデルであるコラ-ゲン関節炎マウスに対する骨髄移植の効果を検討した。 8週齢のDBA/1Jマウスを用いて、Bovine typeII collagenとFreund's complete adjuvantにて初回感作、3週後に追加感作を行い、関節炎を発症させた。この関節炎マウスに対して、致死量の放射線照射(コバルト9Gyとよび11Gy)を行い、24時間後に同系であるDBA/1Jマウスおよび異糸であるBALB/cマウスから採取した骨髄細胞を5×10^6または25×10^6個移入した。なお、BALB/Cの場合はgraft versus bost reactionを避けるために、抗thy1,2抗体を用いたcomplement lysisによりT細胞を除去した後に移植を行った。骨髄移植の時期は、二次感作の1週前、4日後、2週後の3種類とし、関節炎に対する効果を発症率とarthritic indexを用いて判定し、免疫学的な効果はELISA法による抗タイプIIコラ-ゲン抗体価の測定により判定した。 二次感作1週前に行った骨髄移植では、同系、異系ともに放射線照射量、移植骨髄細胞数にかかわらず完全に関節炎発症を抑制した。4日後、2週後の骨髄移植群では、発症の遅延とarthritic indexの減少を認め、特にこの効果は、11Gy照射群、異系移植群、25×10^6個移入群で著明であった。これらの関節炎抑制効果は二次感作後9週間の観察期間の間持続した。抗タイプIIコラ-ゲン抗体価は、どの群でも骨髄移植後早期に減少を認め、特に異系移系植群では二次感作後9週の時期にはほとんど検出できなかった。このことから、異系移植により免疫学的にほぼ正常化したことが示唆された。以上の結果より、骨髄移植を行うことにより、関節炎発症の予防効果と、発症後の関節炎に対する治療効果が得られることが明らかとなった。
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