研究概要 |
本年度の研究の目的:感染症合併多臓器不全(SMOF)は依然として増加しており、昨年1年間で当科に入室したSMOF症例は12例を数えた。感染症の重症化の一因として自己防禦機能の低下が示唆されているが、昨年度は、自己防御機能のうちで非特異的防御機構の中心をなす補体系のopsonic機能につき検討し、SMOFにおいてはAPH50(alternative pathway CH50)が有意に低下していることを認めた。またMOF患者の重症度を適確に判定可能な重症度評価法CISを確立し、臨床に応用している。感染に対する防御機構のうちでも最前線に位置するものは、液性因子としては補体系、fibronectinであり、細胞性因子としては好中球およびmacrophageであると考えられる。本年度は、細胞性因子として好中球の殺菌能につき検討した。 対象:ICU入室の予定手術患者10例(control群)、および感染症合併多臓器不全症例(SMOF群)7例. 方法:(1)重症度評価法:動脈血中ケトン体比、乳酸値、osmolality gapより算出したcellular injury score(CIS)を新たに開発し、この方法によりMOF患者の重症度を判定した。(2)補体系機能の測定C3,C4,CH50,APH50(3)好中球のsuperoxide(02^ー)産生能 結果:(1)CISは多臓器不全患者の重症度を適確に反映する良い指標であることが引き続いて確認できた。(2)APH50はSMOF群で有意に低値であることが確認できた。好中球の02^ー産生能は、control群で1.41±0.25nmol/min/10^5、SMOF群0.53±0.30nmol/min/10^5であり、SMOF群で有意に低値であった。 昨年度の結果と本年度の結果から、SMOF群においては感染に対する防御機構のうちでも最前線に位置する液性因子及び細胞性因子ともに抑制されていることが判明した。今後はこれらの賦活につき検討していきたい。
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