研究概要 |
研究目的:多臓器不全の主要な原因として重症感染症があり、その感染症発生の要因として自己防御機能低下が重要視されている。本研究は、多臓器不全(MOF)患者における、感染に対する自己防御機能低下の機序を究明し、それにもとづき低下した機能を賦活する方法を探り、ひいては感染症合併多臓器不全(SMOF)発生の予防を目ざすものである。 研究実施計画ICU入室のSMOF患者および対照群として予定手術術後患者を対象として以下の項目につき検討した。1.MOF患者の重症度評価法Cellular injury score(CIS)の確立。2.SMOF患者にける自己防制機構の評価。(1)好中球のO_2産生能測定 (2)補体系の活性測定(a補体成分C3,C4.b.classical pathway 活性、c.alternative pathway活性)(3)fibronectinの測定 3.SMOF患者におけるCISによる重症度と自己防御機能低下の相関関係の検討 4.低下した自己防御機能の賦活療法の検討成果 1.MOF患者の重症度評価法として、細胞レベルの障害度を評価しうるパラメ-タ-である OG,AKBR,lactateを用いてCIS考案した。CISは、MOF患者において不全臓器機、患者転帰ときわせて良い相関を示しMOF患者の重症度評価法としての有用性が認められた。2.SMOF患者における自己防制機能の低下の機序につき検討し,これらの患者は、感染に対する防御機能にうちでも最前線に位置する、好中球の殺菌能及び補体系alternative pathwayの活性が有意に低下していることが認められ、感染の重症化ひいてはSMOF発症にこれらの機能の低下が重要な役割を果していることが示唆された。SMOF患者におけるCISによる重症度と、感染に対する種々の自己防御機能低下との間に相関関係は認められなかった。好中球の殺菌能と補体系活性またはfibronectinとの間に相関が認められなかったことより、これらの低下した自己防御機能の賦活にあたっては、それぞれ別々の方法による賦活が必要と考えられた。
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