研究課題/領域番号 |
01570867
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
須加原 一博 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20171126)
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研究分担者 |
江崎 公明 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (80151976)
牛島 一男 熊本大学, 医学部, 助手 (60136752)
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キーワード | 呼吸不全 / 細胞増殖因子 / 修復過程 / 肺胞上皮細胞 / 肺表面活性物質 / 膜透過性 / 人体材料 |
研究概要 |
1.ヒト肺胞II型上皮細胞の分離培養と機能;肺癌などで肺切除を受けた患者の切除肺からヒト肺胞II型上皮細胞を分離培養し、その機能を検索した。症例11名中肺胞II型上皮細胞のpurityが50%以上であった8例では、切除肺1g当り2.7×10^6個のII型細胞が得られ、タンニン酸固定によるpurityは71.0±3.4%であった。ラット肺のII型細胞と比較し、顆粒の小さい層状封入体を多数含んでいた。蛍光抗体法によるアクチンフィラメントなどの構造にも両者で差がみられた。肺表面活性物質のアポ蛋白分泌を測定すると、6時間で10^6個あたり35ngが分泌され、ADP(10^<-3>M)で約2倍に増加し、機能的にはあまり両者に差がみられなかった。2.生体内培養;分離肺胞上皮細胞をフィルタ-を付着した拡散chamber内に培養し、再度ラットの腹腔内にいれ数日培養すると、細胞増殖がin vitroより強くみられる。現在、肺表面活性物質のcDNAを用いてその細胞内合成をin situ hybridization法で調べている。肺表面活性物質の産生、各種刺激物質に対するH^3-thymidinの取り込みやイオントランスポ-トなどについてin vitroの培養細胞と比較しているが、時に炎症細胞の混入があるのでin situ hybridization法で確実に証明しようとしている。In situ hybridization法による肺表面活性物質アポ蛋白のcDNAを用いた細胞内合成については糖尿病ラット、高酵素濃度投与ラットやシリカ投与ラットなど肺表面活性物質合成の促進・抑制状態でも研究を進めている。さらに、胎児肺での合成過程についても研究を進めている。3.肺胞上皮細胞透過性に対する喫煙の影響;たばこの煙や各種炎症細胞の肺胞上皮細胞透過性への影響を調べた。Tobacco smokeで細胞活性を示す短絡電流(SCC)が90分後に60%に低下し、バッファ-液に肺胞マクロファ-ジを加えtobacco smokeの影響をみると、SCCがさらに低下した。Tabacco smoke自体による肺胞上皮細胞障害だけでなく、肺胞マクロファ-ジを刺激することで障害が増強することを示している。Tobacco smokeの成分では、ニコチン自体の影響をみると、1μMではあまり変化しないが、10μMでSCCが逆に促進された。アクロレインでは、10^<-3>Mで強い障害がみられ、二酸化窒素20PPMでもSCCの低下がみられた。 現在、肺表面活性物質のcDNAを用いて細胞内での合成能について検索しているが、胎児肺での合成過程の解明などを含め肺表面活性物質の産生・分泌の調節が明らかになるだろう。今後肺癌発生機序を含めた癌遺伝子についても研究を進めたい。
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