研究概要 |
1。雑種成犬で右リンパ本管を右靜脈角で結紮,左リンパ本管は静脈角にて尾側に向ってカテ-テルを挿入した。犬をへパリン化し,左リンパ本管よりリンパを採取し,量と蛋白濃度を測定後,静脈内に返した。 2。蛍光色素(FTIC)にて標識した既知量の自己赤血球を注入し,FACSにて標識赤血球数の全赤血球に対する%値から循環血液量を経時的に測定し,Ht,血漿蛋白濃度,循環血液量から循環蛋白総量を算出した。 3。6頭の正常非侵襲犬で観察した標識赤血球の%値は,注入後60分で安定し,以後300分まで変化なく保たれた。よって,標識赤血球靜注後60分の値をコントロ-ルとし,その後3時間を観察期間とした。 4。犬を2群に分け,対照群では10ml/kg/hr,実驗群では30ml/kg/hrで乳酸加リンゲル液を静注した(ポンプにて定速静注)。 5。3時間経過後,実驗群は対照群に比し,循環血液量,尿量,リンパ流量,血管外水分貯留量(輸液量ー尿量ー循環血液量の変化量)の有意な増加と血漿およびリンパ内蛋白量の有意な減少を示した。 6。リンパ流量を血管外水分貯留量で徐した再循環率は,60分後は対照群88%,実驗群30%であったが,3時間後は前者82%に対し後者は48%に増加し,貯留水分量の増加に対応してリンパによる排泄が増加した。算出された循環蛋白量は実驗群の方がより多く減少した。 ー結論ー輸液量の増加に伴う血管外水分貯留量の増加は,水分のリンパを介するturn overを増加させて代償していたが,その増加に相関して血管外間質内の蛋白死臓量を増加させて,低蛋白血症を増悪させた。 この結果は第38回日本麻酔学会総会にて発表した。 現在,コロイド液投与時の動態および短時間の心停止によって起こる血管透過性亢進時の水分回収動態を観察中である。
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