研究概要 |
膀胱,前立腺癌に対する治療はこれまで外科的切除を中心として,放射線療法,ホルモン療法,化学療法などが行われてきた.しかし癌患者のquality of lifeを考えると,できるだけ臓器を残す治療法の確立が求められている.今回このような目的でマイクロ波による腫瘍だけを充分に凝固壊死に陥らせる方法を開発し,本法が深部まで熱作用がおよぶという利点の他に,免疫学的な効果も期待できるであろうとの想定を基に,実験的な検討および臨床的な治療効果の解析を行った.ウサギ膀胱にVX_2腫瘍を移植した後,マイクロ波凝固療法を行い,治療効果を組織学的,免疫パラメ-タ-測定および生存率から検討した結果について解析を行い,論文の作成を施行し,その一部についてはすでに学会報告を行った(裏面参照).また,本年4月の日本泌尿器科学会総会(東京)および5月の米国泌尿器科学会(ワシントン,D.C.)において報告する予定である. 臨床的なマイクロ波凝固療法については,すでに実験的な段階を終了し,膀胱癌患者130例,前立腺癌患者10例に対し,本治療を行っている.その効果については,臨床症状,組織学的な検討により有効性を示唆する成績が得られている.膀胱癌に対する本治療後の5年生存率は表在性腫瘍の場合81.7%,浸潤性腫瘍の場合68.2%であり,悪性度別では,G1で93%,G2で78%,G3で60%であった.尚,本法施行に伴う副作用,重篤な合併症は認められなかった. 10例の排尿障害を伴う前立腺癌患者に対するマイクロ波凝固療法は,超音波モニタ-を使用しながら行うことによって,その安全性が確保された.本法と私たちがすでに報告したラルストロンを用いた経尿道的放射線照射法を併用する方法も現在試みており,今後新しい治療法が確立することができると考えている.
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