研究概要 |
タイ国北部において骨病変を伴った尿路結石症が多発しており、その原因として弗素化合物を多量に混じた飲料水、食事を摂取していることによる尿路結石形成及び骨への沈着による骨粗鬆症が考えられた。そこで我々は、タイ国チェンマイ大学泌尿器科の協力を得て、タイ国北術における尿路結石患者を調査し、その結石形成における弗素の役割について報告する。 1、弗素測定法 (1)尿中及び飲料水中の弗素の測定 尿及び飲料水にTISAB(全イオン強度調整用緩衝液)を混じ、弗素イオン電極を用い測定した。(回収率95%) (2)結石内弗素含有量の測定 結石を乳鉢にて粉末にし、炭酸ナトリウムを加え、白金るつぼ内で約800度にて融解させ、TISABを加え、弗素イオン電極にて測定した。一部の結石においてはEPMA(Electron probe micro analyzer)にて結石中の元素分析分布(Ca,P,Mg,F)を測定した。 2、タイ国北部におけるフィ-ルド研究の結果 タイ国北部における骨障害をともなった尿路結石患者のリスト及びフィルムを入手し、それらの患者の尿、飲料水及び結石の採取を行ない検討を行なった結果、一部の患者において飲料水及び尿中弗素含有量が異常に高値を示し、骨病変及び賢結石と弗素との関連性が疑われた。今回飲料水及び尿中弗素含有量が異常高値を示さなかった患者においては、以前は北部の田舎に住んでいたが現在はチェンマイ市内に住んでいる等の患者の生活環境や食生活が変化したことも一つの原因であろうと予想された。結石中の弗素含有量に関しては、タイ北部の結石患者と日本の結石患者の結石とを比較して特に差は認めなかった。
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