タイ国北部において骨病変を伴った尿路結石症が多発しており、その原因として弗素化合物を多量に混じた飲料水、食事を摂取していることによる尿路結石形成及び骨への沈着による骨粗鬆症が考えられた。そこで我々は、タイ国チェンマイ大学泌尿器科の協力を得て、タイ国北部における尿路結石患者を調査し、その結石形成における弗素の役割について検討した。 その地区での尿路結石患者61名の調査を行なった。患者の平均年令52.2歳で男39名、女22名であった。その内、骨病変を伴っているもの10名(16.4%)で男8名、女2名であった。尿路結石患者61名の飲料水中の弗素含有量は0.36mg/lであり、尿中の弗素含有量は1.02mg/lであった。骨病変のある10名の飲料水中の弗素含有量は0.81mg/lであり、尿中の弗素含有量は1.84mg/lであった。 尿路結石患者61名の内チェンマイ大学で摘出された尿路結石12個についてIR法にて分析した結果、CaOx結石2個、CaOx及びCaPの混合結石5個、MAP結石3個、CaOxとその他の混合結石2個であった。 タイの尿路結石12個のうち2個についてまた同じような日本の結石2個についてEPMA、X線回折法、偏光顕微鏡により構成像について比較検討を行なった結果、結石中の弗素について明かに結石を作成する要因として結論することはできず、結石に含有する-微量物質として確認するみのであった。 これまでの研究を通してタイ北部において尿路結石形成に及ぼすものとしては患者の食生活やその地区での衛生状態が、また骨障害を起こすものとしては弗素が影響しているように思えた。
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