近年、二層軟寒天培地を用いたclonogenic assayがコロニ-形成能をもつ特異な細胞群を対象とする細胞培養法として確立されてきた。われわれは、これまでこのclonogenic assayを用いてマウス皮膚およびラット膀胱発癌過程で、腫瘍発生以前にコロニ-形成細胞が出現することを明らかにした。さらに、このような二層軟寒天培地でのコロニ-形成を、発癌初期における変化の指標として応用し発癌プロモ-タ-および抗プロモ-タ-の短期検出法を確立した。本研究は、この方法を用いて膀胱発癌の抗プロモ-タ-活性を検出し得たNordihydroguaiaretic acid(NDGA)を長期の動物発癌実験においてその抑制効果を検討し、臨床での膀胱癌の再発予防をめざすことを目的とする。平成元年11月より6週令のF344雄ラット、250匹を用いて長期の発癌実験を開始した。250匹を8群に分け、1-4群は0.05%のN-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine(BBN)を4週間飲料水として与え、以後、1群にはcontrol diet(CE-2)を、2-4群には各々、5% Sodium Saccharin+CE-2、5%Sodium Saccharin+0.1% NDGA+CE-2、0.1%NDGA+CE-2を投与している。5-6群にはBBNを投与せず、各々、control diet(CE-2)、5%Sodium Saccharin+CE-2、5%Sodium Saccharin+0.1%NDGA+CE-2、0.1%NDGA+CE-2を投与している。現在実験開始後20週であるが死亡した動物はなく実験は順調に施行されている。今後、40週で実験を終了し、各群における膀胱の変化を組織学的に検討し、NDGAの膀胱発癌における抗プロモ-タ-作用を検討する予定である。
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