研究概要 |
近年、われわれは、ラット膀胱化学発癌の過程で、腫瘍発生以前に二層軟寒天培地中にコロニ-形成細胞が出現することを明らかにし、さらにこのコロニ-形成を、発癌初期における変化の指標として応用し、発癌プロモ-タ-および抗プロモ-タ-の短期検出法を確立した(Gann,1987)。またアラキドン酸代謝阻害剤であるNordihydroguairetic acid(NDGA)が、この短期検出法においてラット膀胱化学発癌における抗プロモ-タ-作用が示唆された(Gann,1988)。今回、長期の動物発癌実験におけるNDGAの抗プロモ-タ-効果を検討した。雄F344ラット6週齢250匹を8群に分け、1〜4群をコントロ-ルとして飲料水のみを与え、5〜8群はイニシエ-タ-としてNーButy1ーNー(4ーhydroxybutyl)nitrosamine(BBN)を0.05%の濃度で飲料水中に溶解し、4週間投与した。飼料はCEー2を1群と5群に、Sodium saccharin(SS)を5%の含有量として2群と6群に、NDGAおよびSSをそれぞれ0.1%,5%の含有量として3群と7群に、NDGAを0.1%の含有量として4群と8群に投与した。各群とも40週目に屠殺し、膀胱を摘出しホルマリン注入固定後、腫瘍発生について検討した。プロモ-タとしてSSを投与した6群の平均腫瘍数、平均腫瘍体積は、2.4±2.7個、9.5±20.8mm^3であった。一方SSと同時にNDGAを投与した7群のそれは、各々1.2±1.1個、1.8±5.1mm^3で腫瘍発生の抑制傾向がみられた。組織学的には7群における、癌および前癌病変の発生率は55%で、6群の発生率87%と比較し、有意に抑制をみとめた。NDGAは、ラット膀胱化学発癌におけるSSのプロモ-タ-作用に対し、抗プロモ-タ-作用があった。
|