研究概要 |
ヒト膀胱癌培養細胞株T24をクロ-ニングして得られたCLー7に対してCDDPを持続接触させることにより0.25μg/mlの濃度で増殖する耐性株CLー7/CDDPを樹立した。このCLー7/CDDPは親株と比較して2.7倍の耐性を示した。この耐性機序を解明するため細胞内CDDP量,メタロチオネイン量,グルタチオン量,GST活性を検討した。これらの検討結果より,CDDP耐性は細胞内不活化によるものと考えられた。さらに,このCLー7/CDDPの各種抗癌剤に対する感受性をコロニ-形成法にて検討した。この結果,各薬剤に対する耐性度はCDDPと同等の薬剤(CDDP誘導体,MMC,VPー16),耐性を示さない薬剤(ADM,CTX,IFO,VLB),感受性が増強した薬剤(5ーFU,MTX)の3群に分類可能であった。また,CDDP誘導体の耐性度はDWA2114R>CBDCA>NKー121>254ーSの順に高かった。 次に,CLー7/CDDPをヌ-ドはマウス皮下に移植して,in vivoの系での検討を行った。ヌ-ドマウスでの抗癌剤の抗腫瘍効果の試験はCLー7およびCLー7/CDDP細胞をそれぞれ10^7個/bodyを皮下移植した後に,推定腫瘍重量が100mgに達した時点で薬剤を投与する方法で行った。CDDPは2mg/kg,4mg/kg,8mg/kgの投与量とし,5日毎に3回腹腔内投与した。CLー7およびCLー7/CDDP移植腫瘍でCDDP8mg/kg投与群において腸瘍増殖の抑制が認められた。しかしながら,CLー7/CDDP移植腸瘍においてCDDP耐性は明らかでなかった。さらにCLー7/CDDP移植腫瘍においては増殖が非常に緩徐であり,各個体間での腫瘍重量のばらつきが大きく,この点を改善する必要があると考えられた。 以上の結果から,奏効率のさらに高いレジメンとして,CLー7/CDDPにおける耐性度の異なる3群の薬剤の組み合わせ,あるいは耐性度の低いCDDP誘導体を用いた非交叉耐性交替化学療法の可能性が示唆された。
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