研究概要 |
I.In vitro,in vivo可継代腎細胞癌の樹立 A)ヒト腎細胞癌にIn vivo(ヌ-ドマウス)可継代株を3株、およびin vitro可継代株を4株を樹立した。これらの株はいづれもヒト腎細胞癌と全く同様の病理組織学所見を有しており、in vitro可継代株のうち1株は肺転移を、他の1株は肺転移を示す傾向が認められた。 B)マスル腎細胞癌:Streptozotocin(STZ)による化学発癌でマウス腎細胞癌が得られた。この腎細胞癌は、電顕および光顕上尿細管上皮由来の上皮性悪性腫瘍であり、ヒト腎細胞癌の顆粒細胞型腎細胞癌と類似の特徴を有することが判明した。さらにSTZによる腎細胞癌の発癌過程は、尿細管上皮の空胞様変性した組織内腔の過形成、腺腫様過形成、癌という一連の変化があり、ヒト腎細胞癌の発生過程を検索する上でも極めて有用な実験系であると思われた。この株は可継代株(STZ-RCC)として樹立でき安定した継代が可能であることも判明したこのSTZ-RCCをin vitroでも継代可能株とすることもできた。 II.マウス腎細胞癌の転移モデル STZ-RCCをマウス皮下に移植し継代すると同時に、STZ-RCC細胞のintrasplenic injection,intravenous injectionを行ない投与後10〜28週目にそれぞれ肝転移、肺転移を引起こすことができた。この肝転移巣をさらにintrasplenic injectionすることで、投与後4〜6週目にほぼ100%の確立で肝転移を来す株(STZ-RCC-L)を得ることができた。肺転移株も現在同様にselectionを行なっている。 III.In vitro invasion assay 転移の最初のstepであるinvasionを定量的に評価する“invasionassay"を確立し、上述したヒト腎細胞癌株4株を用いてのinvasive potentialを検討した。4株中2株は明らかにinvasive potentialが高く、腎細胞癌によりinvasive potentialが異なることが示された。さらにこのinvasive potentialはTGF-β_1の添加により阻止されることが明らかになり、この成長因子のinvasionに対する関わりが示唆された。
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