研究概要 |
1.マウス賢腺癌転移株の臓器親和式:Steptozotocinの化学発癌で得られた賢腺癌を静脈内注射することで樹立した肺高転移株を用いて、その転移臓器親和性を検討した。その結果、肺高転移株は肝高転移株あるいは原腫瘍より明らかに肺転移結節数が多く、肺に親和性を有していると考えられた。 2.In vitro浸潤能の機序:前年度においてin vitro浸潤能と転移能とが良く相関し、in vitro浸潤能はEGFにより促進、TGFーβ_1により抑制されることを示した。そこで、このin vitro浸潤能を規定する要因を検討した。同一症例の原発巣および転移巣から新たに樹立したヒト賢細胞癌を用いて、そのin vitro浸潤能を検討したところ、転移巣由来株は原発巣由来株より著明にin vitro浸潤能が亢進していた。この機序を検討するため、それぞれの株のtype IV collagenolysisをtype IV collagen分解量として測定してみたところ、in vitro浸潤能が高かった転移巣由来株のtype IV collagen分解量が有意に高かった。このことから、in vitro浸潤能を規定する因子の一つは、癌細胞のtype IV collagenolysisであることが側明した。これらの株を用いてEGF,TGFーβ_1のin vitro浸潤能を検討してみると、前年度に示した他のヒト賢細胞癌と同様、EGFはin vitro浸潤能に対し促進的に、逆にTGFーβ_1は抑制的に作用した。この際のType IV collagenolysisを検索してみたところ、EGFによりType IV collagenolysisが亢進し、TGFーβ_1により低下することが明らかとなった。この結果はそれぞれの成長因子のin vitro浸潤能に対する作用と軌を一にするものであり、これらの成長因子のin vitro浸潤能への作用が、type IV collagenolysisを介して発揮されたものであると考えられた。 3.各種cytokine,LAK療法のマウス賢腺癌肺転移株での転移抑制を検討したところ、IFNーγ,ILー2,LAK療法の転移抑制効果が認められた。
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