膀胱癌患者12名の臨床病変部より、手術中に癌組織を採取し、そこよりDNAおよびRNAの抽出を行った。このうち3名は、採取した組織量が少ないため、解析に必要な充分量のDNAあるいはRNAを抽出できなかった。又特に悪性度の高い患者では、充分量の組織が採取しにくく、研究目的のひとつである悪性度の変化と癌遺伝子の発現への相関を検討するためには、まだ充分な症例数にいたっていない。その対策として、より多くの癌組織が得られる可能性の高い、腎盂・尿管癌のうち、移行上皮癌症例にも対象を拡大して検討し、現在数名より癌組織を得ている。 実際に癌組織より抽出できるRNA量は、60〜100μg程度のため、これをくり返して使用する目的で、ゲル電気泳動により分離したRNAを、ナイロンメンブレンに移して検討している。さらに、より多くのRNAを抽出できる方法の検討と、癌遺伝子の発現の有無を確認する方法のうち、放射性物質を使用しないで可能な方法を検討中である。同時に、病理学的悪性度分類による臨床治療成績の検討を行って、分子生物学的レベルでの異常との関連について比較検討を行う準備をすすめている。
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