研究概要 |
本研究では今日注目されている多くのアンチアンドロゲン剤について、ヒト精巣上体ミクロソーム分画に局在する5α-reductaseに対する阻害効果を調べた。その結果、阻害効果は作用機序の観点から、直接阻害効果と間接阻害効果に厳密に区別されるべきものであることが明らかとなった。まず直接阻害効果として、finasterideは精巣上体において競合阻害を示し、阻害定数(ki)は1.3x10^<-9>Mであった。0N0-3805では非競合型(noncompe-titive)で(ki2.5x10^<-8>M)にて阻害作用を示した。allylestrenolの阻害作用は10^<-4>M以上で起こり、実質的な直接阻害作用は見られない。3-ketoallylestrenolは10^<-8>-10^<-7>の濃度域で阻害作用を示す。ethynylestradiol, estradiol-17β、estriol、estroneの阻害作用は10^<-6>M以上の高濃度域で見られ、極めて弱い。阻害形式はnonncompetitiveを主体としたmixed type inhibition であった。chlormadinone acetateと3β-hydroxy-chlormadinone acetateのヒト精巣上体α-reductase阻害作用はきわめて弱いが、明確な競合型阻害である。TZP-4238に実質的な5α-reductase阻害作用は見られない。chlormadinona acetate、ethynylestradiolのヒト精巣上体5α-reductaseに対する、直接的な阻害効果はほとんど無いが、これらの化合物もin vivoに投与されたときには、極めて強い精巣上体5α-reductaseの活性抑制作用を示す。1-3ヶ月間、chlormadinone acetate、あるいはethynylestradiolの投与を受け、その後に去勢術の治療を受けた患者の精巣上体5α-reductase活性は著明に抑制されている。このとき両薬剤ともにKm値を変化させることなくVmaxを低下させており、両処置による精巣上体内での5α-reductase酵素の量的な減少、すなわち視床下部下垂体精巣系を介したテストステロン分泌の低下に起因する酵素発現量のdown-regulationを強く支持する結果であった。
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