1.ヒト腎腫瘍組織に対する凍結手術の影響ならびに至適凍結温度・凍結時間の検討。 (1)手術により摘出されたヒト腎腫瘍組織を脱血ヘパリン処理したのち、40℃恒温水槽内に腎を浸し、腎動脈から40℃の温水を400ml/分で持続注入しながら凍結プロ-ブを腫瘍の中心に位置させ、凍結術を施行し、腎腫瘍の凍結状態ならびに腫瘍内凍結温度を観察した。この際、腫瘍内には直径1mmの温度センサ-を凍結プロ-ブより1cm、2cm離した部位に挿入し、腫瘍内温度を経時的に観察した。その結果凍結術開始後、30分で-10℃の平衡状態に達し、腫瘍部分のみ凍結された。 (2)手術により摘出されたヒト腎腫瘍組織をそのまま40℃恒温水槽内に浸し、腫瘍の中心に凍結プロ-ブを位置させ、凍結術を施行した。この際、(1)の実験と同様に温度センサ-を使用し、腫瘍内温度を経時的に測定した。その結果凍結術開始後、-35℃、-70℃の平衡状態に達し、腫瘍部分のみ凍結された。 以上の結果、体内深部に存在しかつ血流の豊富な腎でも充分凍結術の施行が可能であることが立証された。また、腎腫瘍の凍結術を施行する際、あらかじめ腫瘍塞栓術を施行しておくほうが望ましいと考えられた。 2.凍結術が正常腎組織に及ぼす影響ならびに修復過程の検討。 雑種成犬をケタラ-ル麻酔下に開腹し、左腎に凍結プロ-ブを刺入させ、5分凍結術を施行したのち閉腹し、1週後の状態を観察した。5分の凍結により犬腎の約半分が凍結されたが、1週後には腎の約1/5程度に内出血が認められ、修復が認められた。
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