1.凍結術が正常腎組織に及ぼす影響ならびに修復過程の検討。 雑種生犬を用いて凍結後の腎の状態を短期すなわち凍結後1週と長期すなわち凍結後3ヵ月で比較検討した。実験方法は、全身麻酔下に雑種生検を開腹し、凍結プロ-ブを右腎下極に挿入し、冷却温度が-180℃、2分間の凍結を施行した。凍結後1週および3ヵ月の腎の状態を肉眼的ならびに組織学的に検討した。 その結果、短期観察の凍結腎では、凍結プロ-ブの刺入した腎組織だけが楔状の出血巣として観察され、腎の大きさは左腎と同様で変化は認められなかった。組化学的には、楔状の部位には皮質髄質ともに赤血球およびリンパ球の浸潤が著明な出血巣として認められ、凍結壊死していることが判明した。長期観察の凍結腎では、右腎全体が萎縮していた。また、凍結プロ-ブの刺入された部位は瘢痕治瘉していた。凍結された部位以外の組織は、系球体そのものの大きさが縮小し、血管が凍結されたための虚血による変化と思われた。 以上より、凍結された正常腎組織は、3ヵ月以内に虚血による変化により萎縮していき、いわゆるautonephrectomyの状態になることが判明した。 2.臨床応用に向むての周辺機器の改良。 これまでの検討から、体内に存在する腎腫瘍が凍結可能であることは立証されたが、臨床応用に際しては穿刺経路の凍結防止が必要である。このため、開発された凍結プロ-ブならびに直径0.5mmの温度センサ-の外套として、テフロン製品を作製した。これは、テフロンは生体に対して安全な組成でかつ熱伝導率がきわめて低い性質を有しているからであった。 今後近い時期に臨床応用を施行する予定である。
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