衝撃波による結石破砕術の反復施行が腎機能に及ぼす影響について

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570902
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 岸本 武利 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (00047078)
• 研究分担者: 越智 宏暢 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (70047067) ; 船江 良彦 大阪市立大学, 医学部, 教授 (00047268) ; 坂本 亘 大阪市立大学, 医学部, 助手 (00215667)
• キーワード: ESWL / 腎機能 / 閉塞性尿路障害 / 尿路感染症 / ESWL長期予後

研究概要

Dornier HM3を用いたESWLにおける衝撃波(shock wave,SW)の生体への照射、特に腎への照射が腎機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。実験的にはヒト腺維芽細胞を対照として確立されたヒト尿路悪性腫瘍由来のcell lines(Cakiー1,KUー1,EJー1)に対するSW(18kV)照射をin vitroで行い、各cell群のviabilityをtrypanblue exclusion test、RNA合成能、細胞内ATPlevelで評価した。SWの照射数に従いcell viabilityは低下し、約100shotsで有意に低下し、1,000shotsでほぼ1%にまでなった。そして悪性腫瘍由来のcell lineの方が対照としてヒト腺維芽細胞よりもSWに対する感受性が高かった。臨床的にはESWL施行後3年以上を経過した分析可能な患者145名(平均観察期間:44±5.5月)について、腎機能ならびにそれに関連する項目について検討した。これらの患者は平均1.6回のESWL(平均総SW照射数:2,844±2.603shots)を受けた。明らかに総腎機能が悪化した患者は分析可能例99人中9人で、平均治療回数と総照射数は他に比し有意に多く、腎は術前に比し有意に小さく萎縮腎を呈していた。これらの患者の結石は大きく、また慢性感染症を伴っており、単にSWの照射のみが腎障害を招 いたのではなく、結石破砕片の長期停滞による閉塞性腎障害、慢性感染症による腎障害を合併したもので、SW照射は確かに腎障害を起こすが、明らかな恒久的な機能障害は複合した要因により、とりわけ感染症が最も重要な危検因子と結論された。

研究成果

• [文献書誌] K.Yamamoto,T.Kishimoto H.Iimori,et al.: "The effect of shock wave exposure on kidney function in dogs" Invest.Urol.3. 243-248 (1989)
• [文献書誌] T.Kishimoto,M.Senju T.Sugimoto,et al.: "Effects of high energy shock wave exposure on renal function during extracorporeal shock wave lithotripsy for kidney stones" Eur.Urol.18. 290-298 (1990)
• [文献書誌] S.Wada,T.Kishimoto M.Nishisaka,et al.: "Effect of high energy shock wave on human malignant urological cells" Jp.J.Endourol.ESWL. 3. 135-138 (1990)
• [文献書誌] 飯盛 宏記,千住 将明,杉本 俊門,ほか: "衝撃波の腎に対する影響についての実験的研究" 日泌尿会誌. 81. 400-407 (1990)
• [文献書誌] T.Kishimoto,T.Kanazawa,W.Sakamoto,et al.: "Longーterm results of ESWL treatment for patients with stones in the upper urinary tract" Jap.J.Endourol.ESWL. 4. 181-188 (1991)
• [文献書誌] S.Wada,T.Kishimoto,Y.Ameno,et al.: "Immune response of urolithiasis patients treated by extracorporeal shock wave lithotripsy or transurethral ureterolithotripsy" Plenum Publishing Corporation, 5 (1989)
• [文献書誌] 岸本 武利,坂本 亘: "衝撃波の生体作用" 中外医学社, 3 (1991)