1.前年度までの研究成果 尿路結石患者より手術的に、あるいは自然排出によって得られた結石を、約30ミクロンの厚さの薄層切片に製作し、70ー80℃以下の温度でバルサムに包埋し、この標本をオリンパス社製BHS751偏光顕微鏡にて観察した。作製された標本では、結晶と非結晶部分が形状、色彩とも複雑に構成されているので、自動的に解析装置で定量するのは困難なため、標本の画像を偏光顕微鏡にて入力し、イメ-ジプロセッサ-でこれを同定処理して測定する方法を行った。しかし偏光顕微鏡にて同定困難な非結晶の部分、すなわちapatiteや有機マトリックス、あるいは結晶を形成するといわれていても、偏光顕微鏡下では見出し難いhydroxyl apatiteやcarbonate apatiteについては、同定と定量が不可能という結果になった。 2.本年度における研究実績 カルシウム結石について、以上述べた方法こよる定量(混合比率)結果と、赤外分光分析およびX線回折、一部は走査電顕像とも比較検討した。 (1)シュウ酸カルシウム一水化物(COM)と二水化物(COD):ほとんどがCOM、またはほとんどがCODで構成されている結石標本の、いずれも極く一部にX線回折や走査電顕の所見と相違するものも有ったが、大部分は結果が一致していた。 (2)シュウ酸カルシウムとリン酸塩: 結石薄層標本中の非結晶部分をリン酸塩と考えて、赤外分光分析および走査電顕像と比較したところ、概略の一致をみたが、一部には可成りの相違もあった。 以上の相違したところは、標本上の同一部位を分析するのが事実上不可能な点と、X線回折も赤外分光分析も偏光顕微鏡視野と比べると、甚だ巨視的になるため当然の結果ともいえる。
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