前立腺疾患に対する超音波治療は、ソ連を除き世界的にほとんど試みられていない。われわれの施設で試験的に行なった20余名の前立腺肥大症および前立腺炎に帯する治療では、70%近い有効率を得た。しかし、たまたまわれわれの使用したソ連製の装置では、超音波発生器(照射用プロ-ブ)に故障が多く、必ずしも十分な予め想定された照射量が得られたとはいい難い。 そこで安定した出力が得られる、やや改良した装置を国産メ-カ-に依頼した。しかし、ソ連の特許の問題、および装置試作に関する技術的問題で時間を要し、残念ながら本年度は試作品完成をみるまでに至らなかった。 そのため、急きょ従来使っていたソ連製装置の修理と、新しい照射プロ-ブの導入を、同国産メ-カ-の協力で行い、安定した照射出力が得られることを確認し、約10名の前立腺肥大症症例に対し治療を行なった。このシリ-ズは現在なお症例を追加して検討中である。 以上のほかに、本年度は以前に超音波治療を施行し6カ月以上経過した前立腺肥大症症例40例に、アンケ-ト調査を行なった。回答者は34例(68%)であった。その結果、超音波治療後現在までに前立腺に対する手術を受けたもの7例(20.6%)、薬物治療をうけているもの5例(14.7%)で、過半数の22例(64.7%)は無治療で様子を見ていることが分かった。手術を受けた症例の中、5例は推定重量が25g以上の比較的大きい前立腺であった。自覚症の変化をわれわれの設定したスコアで評価し、治療終了時と追跡時とを比較して、総計2以上変化したものを悪化あるいは改善とし、それ以外、その中間を不変とすると、薬物治療例では5例中4例が不変、1例が悪化、無治療例では22例中17例(77.3%)が不変、2例が改善、3例が悪化という結果であった。従って、超音波治療で改善した状態は全体の70〜80%がそのまま6カ月以上維持されることが分かった。これは新しい知見でありさらに症例を増やし、より細かいデ-タ解析を行なう予定である。
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