研究概要 |
各種前立腺疾患に対する超音波治療の検討を,昨年に引続き行った。超音波の治療的応用が最近見直され始めており,さらに前立腺肥大症の保存的治療も世界的テ-マとなっており,本研究の重要性が窺われる。 昨年同様,国産メ-カ-による開発は残念ながら進行していない。やはりソ連の特許問題と輸入業者と国産メ-カ-の疎通の問題,さらには現在治療に用いている超音波の物理的条件が治療に適しているかという国産メ-カ-側の疑問などが主な理由である。 しかし,新たにソ連より照射用プロ-ブを補充できたので,臨床的検討は継続して行っている。その内容は,例えば治療期間を1週間以上にする,1回の治療時間を5分以上にする,2ク-ル目の治療を行うなどこれまで行わなかった条件での検討を試みている。しかしこれらは治療後の観察期間が短く,現時点での有効性の検討は困難である。 そこで本年度も引続き1988〜1989年に治療した症例の遠隔成績の検討を,昨年検討した例より拡大し総計90例でおこなった。アンケ-トの回答は90例中63例(70%)で,治療後6ケ月以上無治療は29例(32.2%),内服治療は18例(21.1%),手術療法をうけた例は16例(17.7%)であった。治療後3ケ月,6ケ月と確実に経過が追えた28例で検討すると,夜間頻尿については,治療直後での判定で改善とした15例中,3ケ月,6ケ月後にそれぞれ悪化した例は7,3例で合わせて66.7%,効力が持続したのは,僅か3例(20%)であった。一方治療中不変,悪化した13例中,その後改善したのは5例(38.5%)であった。これは他の自覚症スコアでの観察でも同様の傾向を示し,超音波治療に効果が一時的である例が多いことを意味しており,さらに異なった治療条件での検討を行うとともにこの治療法の限界などを十分に調べる必要があることを示唆していると思われた。今後この点に関しても解析を加える予定である。
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