研究概要 |
インポテンス患者に塩酸パパベリンを陰茎海綿体内に注入後経時的に末梢血中塩酸パパベリン濃度を測定することにより陰茎支配血管系のどこに障害があるか診断できるようにするのを目的に研究を進めてきたが,血中塩酸パパベリンの測定は高速液体クロマトグラフィ-によらなければならないため測定過程が複雑で,どこででも容易に測定できない。そこで塩酸パパベリンを陰茎海綿体内に注入する際に同時に注入して塩酸パパベリンと同様の流出パタ-ンを示し,しかも測定が容易な物質があれば塩酸パパベリンを測定するかわりにその物質の血中濃度を測定すればよいことになる。この目的にかなった物質を種々探索した結果セフオチアムが理想的な物質であることが判った。セフオチアムはセフエム系の第2世代の抗生物質で血中では代謝されず,塩酸パパベリンと極めて類似した流出パタ-ン(相関係数0.82,危険率1%以下)を示し,本物質の血中濃度を測出することで十分塩酸パパベリン測定の代用ができることが判った。セフオチアムは抗生物質であるので菌の発育阻止を指標に血中濃度を測定でき,測定法は極めて容易で測定結果も安定していることが判った。またセフオチアムは抗生物質であるので塩酸パパベリンの陰茎海綿体内注入による感染をも予防でき一石二鳥である。このように血中塩酸パパベリン濃度の代りにセフオチアムの末梢血中濃度を測定し,勃起曲線(陰茎周経増大曲線)のパタ-ン分類との関係を検討した結果,勃起曲線のパタ-ンをみるだけで血管障害の有無や動脈系に障害があるのか,また静脈系に障害があるのか,さらに両者に障害があるのかまで鑑別が可能になった。
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