研究概要 |
1.腸管を利用した蓄尿式尿路形成手術(腸管膀胱)を受けた患者8名に対し,尿中溶質量を一定にするための食餌を6日間摂取させ,脱水時と利尿時とに分けて,血中・尿中の窒素成分,水・電解質,pHおよび血液ガス代謝を測定した。その結果,腎機能が正常であっても,重炭酸イオンの異常な尿中排泄と高塩素血症の傾向とが,脱水時・利尿時のいずれにおいても認められた。また,脱水状態においても著名な尿量減少は認められず,尿浸透圧は460mOsm/l以下で異常低値を示し,腸管膀胱からの溶質の再吸収あるいは水の分泌を示唆する成績が得られた。さらに尿素窒素は利尿時に排泄量の増加が認められ,利尿状態における腎髄質浸透圧勾配の低下が原因として推測された。現時点では,他の成分についての一定の傾向は認めていない。以上より,腸管膀胱においては脱水時だけでなく利尿時にも水・電解質などの代謝異常が発生ていることが判明した。 2.イヌの空置腸管における水・電解質などの吸収,分泌を実験的に検討するためのモデルとして,尿素,クレアチニン,塩化ナトリウム,塩化カリウム,重炭酸ナトリウムを配合した人工尿について,組成比率の検討を続けている。 3.九州地区における腸管利用尿路変向手術(蓄尿術式を含む)の実態調査および術後3カ月における各種合併症の発生状況についての調査を開始しており,1990年3月末までの成績を,同年4月以降に中間集計する。
|