研究概要 |
新しい免疫抑制剤15ーdeoxyspergualin(DSG)を用い、異種腎移植に於ける拒絶反応の予防を検討した。まず、小動物に於ける実験では、ドナ-としてハムスタ-、レシピエントとしてACIラットを用いた。ドナ-腎は左腎を用い、大動脈・下大静脈を付着した状態で腎動・静脈を摘出した。大動・静脈とも中枢側は結紮し、未梢側をレシピエントの大動・静脈に端側吻合した。ドナ-の尿管は膀胱壁をパッチ状に付けて摘出し、これをレシピエントの膀胱に吻合した。又、レシピエントの両側腎は摘出した。対照の免疫抑制剤非投与群の生存日数は3.3±0.5日(n=6)、DSG5mg/kg連日投与群では6.0±2.0日、10mg/kg連日投与群では平均9.0±6.3日(n=5)であった。10mg/kg投与群で、著しい生着延長が認められたが、3日目、5日目で死亡する例もあり、DSGの毒性が考えられた。そこで、中動物(ウサギ、ネコ間)の腎移植実験では、DSG5mg/kgを投与量とし、皮下注射した。ウサギをドナ-とし、腎を摘出した後、ネコの腹腔内に移植した。移植に際し、血管吻合は小動物に於ける場合と全く同様に行ったが、尿管吻合はドナ-腎の尿管を直接レシピエントの膀胱に吻合した。対照群の生存日数は3,4,4,5日DSG投与群の生存日数は4,4,4,5日と両者の間に有意差は得られなかった。 一方、ドナ-抗原をレシピエントに免疫することにより、特異的なリンパ球クロ-ンを拡張させ、これをDSGで障害し、免疫無反応状態を誘導する試みとして、ラット同種心移植で検討した。移植のー21日、ー7日目にドナ-脾細胞を投与し、DSGは-7ー3まで5日間投与した。移植後は、免疫抑制剤を全く投与せず、移植心生着をみた。60%に免疫無反応状態が誘導されたことが明らかとなった。現在、この方法を小動物の異種移植に応用し、長期生着の試みを行っており、更に今後は中・大・動物への応用を考えている。
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